魔法使い
とうもろこしが、ドロドロのスープになった。
トマトと西洋きゅうりがほくほくのグラタンになった。
鈴木はまるで魔法のように野菜を美味しくしていく。
オレは、小さくなって鈴木の肩に止まり、鈴木が野菜に魔法をかけていく様子を見るのが楽しかった。
まぁ、退屈しのぎにしかならないが。
じゃがいもを切って水に浸けている…他の野菜はそのままなのに。
肉はしょうが醤油に浸けている。
鈴木は今、糸コンを鍋に入れて火にかけている。
オレには、その1つ1つの行動の意味が分からないが、美味しい秘密なのだろう。
口出しなど野暮だ。
何故か鈴木は糸コンを一度取り出した。
どうせ他の野菜も煮込むのだから、そのままの方が早そうなものを…。
あっ、オレは柔らかい人参の方が好きだ。
早く人参を煮込め。
しょうがをあまりたくさん入れるな。
そんなものは少しで良いんだ。
それにしても、台所はなんだか温かくて、うとうとしてしまう…。
………。
!
おい、急に鍋を開けるな。
蒸気が顔にかかって熱い。
「ああ、ゴメン。」
「何?」
「え?だから、ゴメンて…。」
「オレは何も言っていなかったぞ。」
「ぶ…(笑)さっきから、オレの料理を実況中継してたじゃないか。」
「え…。」
バサバサバサバサ…
そんなの、恥ずかしいじゃないか。
鈴木はオレの心まで読みとる。
やっぱりあいつは魔法使いだ。
END
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今になって、オケの「三角帽子」の存在を思い出しました。
やっぱり、オペラ歌曲の題名だけで小説書くなんて無理だよ←
ヘンゼルとグレーテルのお菓子の魔女の歌もあったのですが、題名はあんまり魔法使いっぽくないし…
まぁ、チビ若が主人公な訳ですが、可愛いお話に仕上げてみました。
鈴木が料理上手い設定はもはや公式デフォですよね。