Will you merry me?5


式を挙げてから半年が過ぎた。
二人の新居は、ヨルビアン大陸のベルジョだ。

「毎日美味しいチョコレートが食べたい」
そんなイルミの一言から、「チョコレートならベルジョだね」と話が決まり、ベルジョの首都であるパドーヴァの郊外に大きな1軒家を建てた。
実家からは遠くなるが、いつも仕事で外国にも出向いていたイルミはホームシックにかかるどころか、大好きなチョコレートに囲まれて充実した日々を送っていた。
ヒソカも時々ゾルディック家から回ってくる仕事をこなし、二人での生活にはすぐ慣れた。
元々お互いにマイペースなので、どちらかが家に居ようが外に居ようが干渉はほとんどせず、二人の都合が良い時に出かけるなどして過ごした。






何度かゴンとキルアが遊びに来ることもあった。
彼らは今、人間には懐かないとされているキツネグマのオスを保護して育てている。
ゾルディックには内緒で一緒に住んでいるのだそうだ。

イルミは「しっかりしなよ」と声をかけるものの、自分も家を出ているので強くは出なかった。
キツネグマはキキョウの日本好きが影響されたイルミとキルアに「サムライ」と名付けられ、愛称のサムと呼ばれて二人が遊びに来る時はいつも一緒に来た。

ヒソカの好きなブレターニャ様式の広い庭にサムを放して、サンルームでゆったりとお茶をするのが定番だ。

足の不自由なサムがはしゃぎすぎて転ぶ度に、キルアは甲斐甲斐しく起こしに行く。
自分の息子が可愛くて、目に入れても痛くないような可愛がり方だった。
そんなキルアを、「甘やかしすぎだけど、人間に銃で撃たれたサムにはちょうど良いのかもしれない」とゴンも温かく見守る。
「君たちは本当に美味しそうだね♪」と怪しく笑うヒソカをイルミが小突いた。






「また来るね!」
「次はサムももっと大きくなってるからな!」
二人は元気に帰って行った。

家はヒソカとイルミの二人だけとなって静かだった。
明日は二人揃ってたまの休日。となれば、夜更かしがしたくなる。
いつものようにヒソカがバーテンをやり、イルミがヴォルフィーというチョコレートリキュールのミルク割を飲む。
ヒソカは近所のショコラティエから買ったチェリーボンボンを齧りながらウイスキーをロックで煽った。


「またあの子たちが来るのが楽しみだねぇ♪」

「…ヒソカ、じじ臭い。」

「…そうかな。」

「オレだけで満足できないんだ?」

「くくくっ。君がそんな事を言うなんて珍しいね♪」

「お酒入ってるしね。」


「かわいいよ」とイルミの腰に手を回し、自然とキスをする。
ヒソカはイルミを甘いと思い、イルミはヒソカを熱いと思った。
ベッドルームに移動して、お互いをむさぼる。
何度かのセックスを終えた時、ヒソカがふとため息を漏らすように言った。
「…赤ちゃん欲しいね」










それから3カ月後。
ヒソカが仕事を終えて帰ってくると、久しぶりに見たイルミはいつもより一回り、いやかなり背が低くなっていた。


「…君、どうしちゃったんだい?」

「女の子になってみたんだ。」

「へぇ〜何のきまぐれだい?もちろん可愛いけど、普段のイルミが好きだよ?」

「これなら、赤ちゃんできるかもしれない。」

「…なんだって。」

「ヒソカ、君が言ったんじゃないか。」

「君、女性のそんなところまで再現できるのかい?」

「わかんない。」

「まぁ、試す価値はあるのかも♪」


イルミによると、「自分なりに女性の体を勉強した」とのことで、必要であれば女性ホルモンを摂取したり、
食物で動物性たんぱく質と植物性たんぱく質を同じ比率で摂取したりすると、体の中で女性ホルモンが活性化されるから、
パーツの揃った体なら上手く行けば妊娠も可能なのではないかという結論に至ったという。

念の修行を始めると同時に東洋医学を研究したイルミは知る限りの女性のためのツボを全て刺激するマッサージを毎日行い、
3カ月かけて自分の体を限りなく女性に近づけたところで最後の仕上げに針を刺したのだそうだ。


「君は最高だよ、イルミ♪」


自分の肩より低い位置にある頭をポンポンと撫でながら、ヒソカは柔らかくなったイルミを抱きしめた。
ヒソカはふと、あるべきものがないことに気づく。


「胸は全然ないね?」

「母さん見てて邪魔そうだったからね。」

「…でも、子育てには必要なんじゃないかい?」

「妊娠すれば勝手に膨らむみたいだよ。」

「僕が毎日マッサージしてあげるよ♪」










それからの二人はできるだけ家に居るよう心がけ、毎日の食事に気を使い、豆や豆腐を多く食べてマッサージも行った。
服や靴も新しく婦人物を購入し、体の特にお腹周りを温めた。
イルミの体は順調に女性となり、1ヶ月半後には月経も起こった。

大きくなったサムを連れて遊びに来たゴンとキルアは驚いたが、「頑張って夢を叶えて欲しい」と応援を送り、「楽しみにしている」とプレッシャーもかけた。

初めての月経からしばらくそれが途絶え、2カ月後に検査薬を使ったが陽性反応がない。
「まだ早いのかもしれないよ」そう励ますヒソカだったが、次の週にはまた月経が始まった。
慣れない体のための生理不順だった。
期待が大きかっただけに自然と涙ぐむイルミの小さな肩をヒソカがそっと抱きしめた。





NEXT SOON...
***********************************************************************************************
ベルジョ:ベルギーのイタリア語。
パドーヴァ:本当はイタリアの都市です。
ブルターニュ:イギリスのイタリア語。
私が使う地名はほとんどイタリア語を「あたかも原作に出て来そうな感じ」で使って居ます。
さぁ、ヒソカとイルミは無事にパパとママになれるのでしょうか?