Will you merry me?2




夜闇に紛れて身を隠し、ターゲットへと近づいて行くイルミ。

今回のターゲットには念能力者が護衛についているという情報がある。
どんな能力者かは不明だがターゲット自身は一般人ということなので、
そんな場合のマニュアル通り"ターゲット以外は殺さない方向"つまり念能力者との対戦は避けたい。

_おかしい。

念能力者は1人と聞いていたが、屋敷に居て絶を使っている者が自分を含め3人居る。
その中の一人は、屋敷に入ってからわざわざ自分が念能力者であることを知らしめるかのように絶を始めたのだ。
よほど自信があるのか、それともバカなのか。

_絶を身につけられるくらいだから、そこまでのバカは居ないよなぁ。

それに、好戦的なのか、こちらに向けられた敵意が半端ない。
これでは戦闘は避けられそうになかった。

_できれば先にターゲット殺っときたいなぁ。

メモによると、ターゲットである屋敷の主は23時には一人部屋で就寝し、念能力者はその隣の部屋に居る。
今はもぅ0時だ。
イルミは屋根裏から行こうかとも考えたが、さすがに蜘蛛の巣やら埃やらが多くて入りたくなかった。
仕方なく念能力者の居ない方向の廊下から攻める。

念能力者も眠っているのか、ターゲットは意識を覚醒させる前に始末できた。
しかし、ターゲットの微量なオーラが無くなったことには気づいたのか、念能力者の円が広がった。
こちらも初めから絶を使ってはいるが、早いところ帰って寝たい。
イルミが堂々と動いて窓に手をかけた時に、壁が破れて念能力者の男が現れた。
拳にオーラが集中していることから、強化系だと思われる。
イルミが針を無音で投げると、男の体は宙に舞い、床に叩きつけられた。


「!?」

「やぁ♪」

「…ヒソカ、何してるの?」

「お人形さん遊び♪」

「…悪趣味だね。」

「だって、イルミが構ってくれないからさぁ〜。これ、殺していい?」

「好きにすれば。」


男はいつ捕まったのか、ヒソカのバンジーガムで体中を締め付けられ、窒息死した。
イルミはそれを見届けるでもなく、再び窓に手を掛け外へ出ようとする。
それをヒソカが慌てて追いかけた。


「ねぇ、待ってよ。」

「待たない。オレはもぅ眠いんだ。」

「僕ももぅ待てないよ〜」

「?」

「君、全然返事くれないんだもの〜」

「じゃあ、明日ね。」

「君の好きなチョコレートが、僕の飛行船にあるんだけどなぁ♪」

「・・・・・。」

「アロマオイルもジャポンの"ヒノキ"を用意してあるよ♪」


イルミは少し考えるポーズをしてからヒソカの方へ振り返り、「今日は何もしないでね」と念を押して、ヒソカの飛行船に乗り込んだ。
ヒソカが行き先を入力している間に、イルミはシャワーを浴びた。
「Sakeも冷やしてあるから、温まっておいで♪」というヒソカの気遣いが嬉しかった。
その間、"ヒソカと何か約束があっただろうか"とずっと考えを巡らせたが、分からないまま、ぬるい湯を頭からかぶって泡を落とした。


「チョコレートは?」

「お姫様の髪が乾いてからね〜」


ヒソカが甲斐甲斐しく、イルミの長い髪を丁寧にタオルドライしていく。
いつも通りヒソカが用意したパープルのベビードールを着て、いつも通り髪を乾かしてもらう。
この展開なら、いつも通り軽食とお酒の後にベッドインだろう。
そう予測したイルミは、こんなもの着るんじゃなかったとばかりにベビードールを破いていく。


「あ〜…何してるんだい、イルミ?」

「だって、今日は何もしないんでしょ?」

「それは君が勝手に言ってるだけだよ。」

「嫌がるオレを無理やり犯すの?」

「それもいいね♪」


_それに、ちょっと破けたベビードールもそそる…。

ヒソカは毛先が乾いていないイルミの髪を放置して彼をベッドへと運んだ。
自分の言う事を利かないヒソカの背中に爪を立てるイルミだったが、軽い傷の刺激さえもヒソカには心地良かったので逆効果だ。
ベッドルームの前の廊下で壁に押し付けられながら激しく口づけられ、わずかに呼吸が苦しくなる。
口づけの最中もイルミをこちらへ惹きつけるために、もどかしくなるような刺激を忘れない。
「疲れたって言ってるのに…」というイルミも、だんだん抗議の声を上げなくなり、代わりに甘い呼吸を吐き出した。

わざと乱暴にイルミを持ち上げ、しかし、ベッドに寝かせる時は不安になるくらい優しく。
まだ少し濡れていた髪が冷たかったが、上からヒソカの体温が襲ってくるので髪を避ける暇もなかった。
体中に降り注ぐ、ヒソカのキス。
肌だろうが、薄い布越しだろうがそれは関係ない。
たまに、痕をつけられる。

そして、強く抱き締められた。

行為がしばらく止められ、イルミは不思議に思う。

_ヒソカはいつも、一度始めたら終わるのが朝なのに。

ヒソカの背に手を回すと、ヒソカの呼吸の大きさが伝わってきた。
いや、大きな呼吸を小さくしようと抑えている感じ。


「泣いてるの?」

「…愛しているよ…とても。」

「…うん、知ってる。」

「じゃあ、なんで返事くれないんだい?」

「?」

「僕は、ずっと苦しかった。どうやったら、この気持ちを君に伝え切れるのか、他に分からなかったのに、君は…」

「…あれ、本気だったの?」

「へ?嘘だと思ったの?」

「まさか、ヒソカがオレと家庭を持ちたいと思ってただなんて、知らなかったよ。」

「基本的には、今と変わらなくていいんだけどさ…"結婚しよう"ってこの世で最高の愛情表現じゃない?」

「じゃあ、結婚した人はもぅ愛情感じないの?」

「そんな、とんちみたいな事言わないでおくれよ。」

_で、返事は?

そう促すと、「考えてなかった」という、いつにも増してイルミらしい返事がかえってきた。

「ちょっとお話しようか。」
と、ヒソカはイルミの腕を取ってリビングへと向かった。
Sakeとチョコレートを出してくれたので、イルミはやっと甘いものにありつけた。

_僕はいろいろ考えたんだ。

とヒソカが語る。


まず、お互い忙しい身だから、"結婚"とは言う物の、基本的には別居でも良いと思って居る事。

イルミの国では同性婚を認めていないから、パエージで籍だけでも入れるつもりである事。

子供については二人で話し合ってから方向性を決めようと考えていた事。





「ふぅん。」

「君はどうかな?」

「それってさぁ、ドッキリ・テクスチャーと一緒じゃない?」

「え?」

「そんな薄っぺらな紙の契約がないと、ヒソカは愛情を感じないの?」

「…イルミ…」


彼は言い残してベッドルームへと消えて行った。
一人残されたヒソカは、思いがけないイルミの言葉に動けずに居た。










どうすれば










どうすれば、イルミを自分だけのものにできるのだろう
















さっきのイルミは何だか悲しそうだった。
僕が悲しませた。
イルミの感情を揺らせるのは快感だが、今はそんな事を考えている時じゃない。






イルミが悲しいのは、僕が彼の望んだ答えを出さなかったからだ。






1時間後、ヒソカは答えを握りしめてベッドルームに向かった。







「…イルミ?」


名前を呼ぶが、返事はない。
しかし、確実に目覚めているオーラだ。


「イルミ…。ゴメンよ。僕が間違ってた。」

「…。」

「一緒に暮らそう?二人の時間が少なくても、君と同じ家に住んで、同じ空気を吸いたい。」

「…オレの親父を説得できたらね。」

「今度は僕が欲しい答えを貰う番だよ。

 僕と結婚しよう?イルミ…。」

「…うん。」


朝日が昇る頃、ヒソカの飛行船はパドキアの地に降り立った。





NEXT SOON...
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イルミならプロポーズをどう受け取るかな。と考えて、私の結論はこうなりました。
ヒソカを悩ませるイルミが好きです。