月に寄せる歌




今日は満月だった。
ロールパンナは、ゴミラの城に来ていた。
久しぶりに友人に会おうと訪れたのだが、ゴミラは留守のようだった。
ゴミラには相談があった。


アンパンマンはどんな人なんだろう。


ゴミラがなんて思うか知りたかった。
先日された口づけ…。
ドキンに相談すると、それは「キス」と言って、好きな相手にしか行わない、特別な気持ちのしるしなのだと言われた。

「アンパンマンにされたんでしょ?」

ドキンには言わずとも分かったようだった。
動揺していると、「見れば分かるわよ」と言われ、ロールパンナはさらに困惑した。
もっと話を聞いてみたかったのだが、ドキンはすぐにショクパンマンを追いかけに行ってしまった。


特別な気持ち。


アンパンマンが何故、自分なんかにその特別な気持ちを持つのかが分からなかった。
ロールパンナは生まれてからこれまで、アンパンマンに攻撃し続けて来た。
メロンパンナのおかげで良い心が強くなった時もあったが、またバイキンマンにバイキン草のエキスを注入される等して、またアンパンマンを襲撃した。

その度に、

「君とは闘いたくない」
「僕は負けない!」

とロールパンナを信じていたアンパンマン。


特別な気持ち…


ドクン…
と、胸が鳴るのを感じた。





私を信じてくれるアンパンマン。
アンパンマンなら、きっと私を…。

…でも、ダメだ。
そんな都合の良いことなんて、あるはずがない。

でも、でも…
気付いてしまった。





私はアンパンマンが好きなのだ。




いつもはメロンパンナを連想する満月だが、もぅアンパンマンにしか見えなかった。
この気持ちをどうすれば良いのか分からないロールパンナ。

空にまあるく浮かぶ白銀の月に、そっと、「好きよ…」とつぶやいた。


END
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この「月に寄せる歌」は、別名「白銀の月よ」という、ドヴォルジャークのオペラ「ルサルカ」の一曲です。
「ルサルカ」は人魚姫のお話に似た物語で、
水の精のルサルカが、自分の住む湖に狩りの時、水浴びに寄った王子様に一目惚れをして、
その日昇った満月に「私があなたを好きだということを伝えてください」と歌うのが、「白銀の月よ」です。
よく月を見て想いに耽っているロールパンナを重ねてみました。